ナースの米国株式投資

30代の看護師。兼、米国株式投資しています。

さらば地球よ!

クジラです。

 

ココは宇宙空間。いわゆる宇宙船の中だ。

 

リノリウムの床材に、窓と呼ばれる船内と、船外とを隔てる強化用ガラス製材。

 

船内のほとんどは商業ビル、マンションの壁材のようなもの作られており一見すると、船の中であることを忘れてしまうようだ。

 

いや、コンセプト的には船の中であることを忘れて、ゆっくりリラックスしてほしいとかだったか。

 

くすりと笑い、窓の内側のカーテン代わりの内扉を少しスライドさせて外を見る。

 

外は光を吸い込む漆黒の宇宙空間に遠くにいくつか星々が見える。それだけだ。

 

内扉を指先で少々乱暴に閉めた。

 

外を見ても、朝も昼もなく、何も変わらないのだ。

 

振動は全く感じないが、今もこの船は動いている。

 

船自体は金属で出来ているらしい。

 

ワタクシがいるのは一般の生活民の居住区だ。

 

居住区は共有スペースと、各自の個室からなる。

 

ワタクシが占有するのは6畳ほどの個室だ。

あと、8時間後には共有スペースで始まる健康チェックにスタッフとして出席しなくてはいけない。

 

ワタクシとは別にVIPな政治的、社会的に尊ばれるべき(と言われる)方々がVIPな居住区にいる。

 

設備的にはワタクシがいる、一般居住スペースと同じハズだが、彼らはワタクシらとは一線を引き関わろうとしない。

 

『ヒマだから耐久24時間トランプで、大富豪しないか~?』って誘っても、

 

『おなかが痛いのでいいです。』と、船内メールで送ってくる始末だ。

 

あぁ、そういえば昔トランプとかいう大統領が居たな、と手元のトランプの手札を見ながらふと思い出す。

 

20※※年。

 

地球から我らが脱出して、何年になるだろう。

 

脱出いや、逃げ出すきっかけは何だっただろう。

 

ニッポンは原発の事故処理がズルズルとめどが立たず、立ち入り禁止区域だけが徐々に増えていた。

 

もう、誰も原発の側に近寄ることもできないのだ。

 

日本人の人口の減少は歯止めがかからず、国としての形が成り立たなくなっていた。

 

国は破綻し、インフラは全て死んでいる。

 

大陸、アジアなどからの外国の人々だけが増え、もう彼らを移民だとか呼ぶものはいない。

 

いわゆる強い者が正義である、北斗の拳的な世界だった。

 

後は、某北朝鮮やら、某アメリカやらその他核やらを持ち出して打つだのなんだのの騒ぎになり、紛争になり、抗争になり、戦争になったらしい。

 

情報はもうその頃にはろくに回ってもこなかったし、誰が悪いのかも今となってはわからない。

 

ワタクシはアーリーリタイアしたいなっ☆とお気軽にブログを書いていたころに、

 

【日本マジでやべえ!】と痛感していた。

 

密かに脱出用のパスポートを取得し、必要最低限の日本円以外はドル資産にした。

 

日本以外のどこか安全に暮らせる国はないか?って探していたが、悲しいことに

 

希望に合うような国が見つかる前に地球が破綻してしまったのだ。

 

宇宙開発を手掛けるいくつもの外国企業に民間ロケット開発が進んだら優先して載せてもらえるようにと頭を下げて回っていた。

 

その一つが幸いなことにナースとして働くのを条件に船に乗せてくれたのだ。

 

アーリーリタイアなんて言っていたのにね。

 

ワタクシは手札を左手に持ち替え右手をじっと見つめてみる。

 

あのころ、ブログを書いてひとりきゃあきゃあしていたあのころ。

 

あれからもう、50.60年は経っただろうか。

 

船は人種、国家もなく、ただただ有益なニンゲンだけを搭載している。

 

この船の前に先行していった船が、ヒトが住めるだろうと目星をつけた惑星に更に改良を加えているハズだ。

 

酸素バランスの調節、温度の調整、プランクトン、緑色植物の土着。

 

これらが一つでもうまくいかなければ、この船に乗っているニンゲンはこの船をお墓にする運命だ。

 

ふふん、いずれにしたって、まだこの船に半世紀はいなくてはならない予定なのだ。

 

時間はいくらでもある。

 

ワタクシ以外のヒマしている多くのスタッフも、先行の船から漂着許可の信号を聞くのはコールドスリープされた、VIPな居住区にいる人々なのだということを知っている。

 

本当のVIPな人たちはコールドスリープという状態で、いわば眠ったようにして宇宙の時を過ごす。

 

ワタクシは、そのヘルスケアのチェックを定期的にして回るわけ。

 

まあ、ほとんどがAIの報告を確認するくらいで、手間はないんだけれどね。

 

持ち回りで、船のチェックも、コールドスリープのヘルスチェックもしているので、一年後にはワタクシもコールドスリープにつく。

 

なので、ワタクシも新たな星になんとか自分の足で立つことが出来るハズ―。

 

そうだ、大富豪をしていたんだ。

 

隣のヒトから突っつかれて、手札のチェックをもう一回する。

 

ローカルルール何でもアリで、私から。

 

ワタクシは手札から2を4枚出し、 大富豪を高らかに『革命!』でスタートさせた。

 

 

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